毎年恒例のベストは下記の通り。
2022年新作ベスト (鑑賞本数51本)
<新作ベスト>
1位『みんなのヴァカンス』
2位『リコリス・ピザ』
3位『ケイコ 目を澄ませて』
4位『猫は逃げた』
5位『ブラック・フォン』
6位『カモン カモン』
7位『マイスモールランド』
8位『RRR』
9位『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』
10位『ハケンアニメ!』
<次点>
『香川一区』
『コーダ 愛のうた』
『THE FIRST SLAM DUNK』
新型コロナウイルスの状況は少しずつ落ち着いてきたけれども、劇場公開される洋画が減り、配信に向かっていく傾向が止まらない。そんな中でもきちんと公開されたギョーム・ブラックの新作『みんなのヴァカンス』はロメール的なバカンス映画で底抜けに明るくてとにかく楽しい。この人は撮る度にどんどん良くなっている。いつか『宝島』もちゃんと公開して欲しい。
偏愛のポール・トーマス・アンダーソンの『リコリス・ピザ』は2人の恋愛模様を囲むエピソードやシーンが愛おしい。特に坂道をバックで逃走するシーンは馬鹿馬鹿しくて最高!
『ケイコ 目を澄ませて』は冒頭のミット打ちから音の映画であることを明確に打ち出していた。荒川周辺を走行する電車、開発で変わりつつある下町、ジムに響く乾いた練習の音、弟のギターなど声を発しないケイコの周りは豊かな音で溢れている。岸井ゆきのの演技は今年のベストアクト!音繋がりでいえば、『カモン カモン」のインタビューで声を集める主人公や聴覚障害を真正面から描いた『コーダ 愛の歌』も忘れ難い。
旧作ベスト(鑑賞順) 鑑賞本数31本
『ゴッドファーザー PARTⅡ』(TOHOシネマズららぽーと横浜)
『イン・ザ・スープ』(目黒シネマ)
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(シネマ・ジャック&ベティ)
『EUREKA ユリイカ』(横浜シネマリン)
『周遊する蒸気船』(シネマヴェーラ渋谷)
『ミツバチのささやき』(目黒シネマ)
『ブエノスアイレス 4Kレストア版』(シネマート新宿)
『永遠のガビー』(シネマヴェーラ渋谷)
青山真治が亡くなった2022年。青山さんはどこか掴み切れない映画を撮る印象があり、そこまで思い入れのある人ではなかったので、最初のショックはそれほど大きくはなかった。今回『EUREKA ユリイカ』を10年振りに見直したら、初見時よりも驚きと感動が大きく、青山さんの偉大さに改めて気づかされる。再見とはいえこんな大傑作に出会うこと自体10年に1回あるかどうか・・・その他再見の『ミツバチのささやき』と『ブエノスアイレス』も素晴らしく。またシャンタル・アケルマンが世界的に再評価される年でもあったけれど、ゴダールが亡くなったことはとにかく痛ましい。彼の追悼の意味も込めて、色々見直すつもり。
自宅ベスト(鑑賞順) 鑑賞本数61本
『ドント・ルック・アップ』
『なぜ君は総理大臣になれないのか』
『さよならくちびる』
『競輪上人行状記』
『13人の命』
『我が胸に凶器あり』
『Don′t let it bring you down』
『WiLd LIFe』
『サッド・ヴァケイション』
『アテナ』
配信のみとなった『13人の命』はプロフェッショナルたちの姿を描く名手ロン・ハワードの傑作。暗闇の救出劇なのに、劇場公開されなかったのが惜しい。
『EUREKA』をきっかけに青山さんの作品を製作年数順に観ていた2022年の後半。初期のアクション映画は北野武や黒沢清的な瞬間があったり、時には神代辰巳、イーストウッドな1本もあったりする。初期作から遺作の『空に住む』まで彼のスタイルはいつも自由で、今も生きていればもっと拡がりのあるフィルモグラフィーになっていたと思う。
読書
『無意識のバイアス 人はなぜ差別するのか』 ジェニファー・エバーハート
『戦禍に生きた演劇人たち 演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇』 堀川惠子
『決定版 日本の喜劇人』 小林信彦
今回から備忘録として。どれも知らない世界を教えてくれる名著だった。特に堀川惠子さんの作品はもっと読みたいと思う。